M系列信号変調相関法による音響伝播系の測定システム

   2001年1月
Aoki Applied Acoustics. Co., Ltd.
青木応用音響 株式会社

1. M系列変調相関法
 M系列変調相関法は,外乱が大きい環境下でも,精度の高い騒音の伝播量の時間平均値を計測することができる。このため,屋外を長距離伝播する騒音の減推量の計測する場合や,高暗騒音下での音の伝播系の特性を計測する場合に非常に有効な手法である。
 擬似ランダムノイズの1種であるM系列信号で断続した試験音を発生させ,音響系を通って観測された試験音の強さ(2乗平均)と、もとのM系列信号の相関を取る方法である。
 相関を取ることにより,無相関な暗騒音の影響は非常に小さくなり,また、相関関数が,鋭い三角形のピークを有し,この三角形の高さが音の強さに比例するため、伝播音の強さを把握することができる。
 このことは,音の伝播に関する特性は試験音に,相関に関する特性はM系列信号に分担させたエネルギーレスポンス法ということができる。

2. M系列信号
                
 M系列(Maximum-length Linear Shift Register Sequence)は、0と1をとる擬似ランダム系列のうちで最大の周期を持つもののことである。nをM系列の次数とすると、n次のM系列は、2n-1の周期を持つ。今時間単位hを考え、これをM系列の0,1に対応させて、0のとき-1、1のとき1の値をとる関数を作って、M系列信号とする。この信号の周期は(2n-1)・hである。

3. 特徴

【利点1】 相関技術を用いているため、暗騒音の影響が大きい環境下での測定が可能。‐10〜-15dBのS/N比でも可。

【利点2】 音圧の直接相関法では致命的となる大気の揺らぎなどによる位相の変化を、M系列信号の単位 hを大きくとることにより、ほとんど気にしなくてもよい。

【利点3】 断続される信号を変えるだけで、周波数ごとの測定も自在に対応できる。

【利点4】 時間差が、M系列信号の単位hの2倍以上離れていれば、それぞれの到達音として分離計測できる。


4. 測定例

第1波に比べて、振幅比で1/2、エネルギー比で1/4、時間遅れ150ポイントの伝播音がある場合の相関波形例。

5. 応用範囲
・屋外の騒音伝播実験。
・暗騒音の高い環境下での遮音壁等の効果の把握


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