騒音性難聴
人の生活には音は付き物で、その中で環境音は意識しないと気づかない音です。外では雑踏や自動車の音、室内ではエアコンや水の流れる音や風の音がこれに含まれます。でもこの音が、聞き取りの妨げになりますし、長時間聴取すると難聴が起こります。古くは西暦100年頃にナイル川の瀑布付近住民の難聴が報告されています。職業性難聴としては青銅器時代からあったとされます。
騒音による聴力障害は騒音の高低にかかわらず、4000Hz付近から始まります。軽度の場合や、早期の場合は治療によって治りますが、慢性になるとほぼ治癒は困難になります。日本での騒音の規制値は85dBAで、先進諸国と同じレベルです。日本では周辺住民に対する騒音は規制が厳しいですが、働いている人には規制はあっても問題になることは少ないです。騒音は何dBなら大丈夫というのではなくて、どんな小さな音でも蓄積されていくと、難聴の原因になります。老人性難聴のほとんどはこれらの騒音の積み重ねです。その証拠にアフリカの都市化されていない地方の人たちの聴力は老人でもほとんど聴力の低下が認められません。騒音が85dB以内ならその影響は40年で10dB程度ですが、それに加齢による難聴が加わるため、たかが10dBとはいえ、言葉の聞き取りなどには大きな差となって現れます。騒音に振動が加わると更に10−15dB難聴が強くなります。
予防対策
騒音源への対策ですが、燃焼バーナーの音では安定した燃焼状態を目指すように、送風機では消音器を付けたり、圧縮空気の放出音にも消音器が必要です。モーターや回転する物体では、バランスの再調整を行います。それ以外には音源を密閉したり、振動を防ぐためにゴムなどを使います。壁や天井には反射する音を抑えるため、吸音材が有効で、音源と働いている場所が近い場合は衝立や塀が有効です。最後に、働いている人への対策には耳栓などの保護用具や、作業時間を短くすると良いでしょう。ただし保護用具には警報音が聞こえないとか、会話しにくいという欠点が有ります。
障害認定の問題点
騒音性難聴は、労働者もしくは、1人親方の特別加入保険に入っていれば労災保険の障害補償を受けられます。しかし、騒音性難聴は有効な治療法が無いため、労災保険の療養給付の対象とは認められていいません。障害補償における障害等級の認定もその人が退職したときに行われるため、更に難聴が進行することが多いです。再就職に不安があると難聴を我慢して働き続けると言うことになり、他の部位の障害に比べて、すぐに補償が出ないため、不利です。
最後に
騒音性難聴はすぐに支障が出る障害では無いので、職場の管理者や経営者に騒音軽減に対する理解がないと、対策が後回しにされます。しかし、年をとって人と会話が出来ないのは大きな障害となります。騒音性難聴は現在の医療では治すことが出来ないので予防が重要です。