雑文 2
このコーナーが始まって、
ずいぶん時代は変わったけれど、
一番変わったのは自分かな?
どうぞ飽きずに、おつきあいください。
125.ヤンキーとうつ(2011-07-04) 124.ふるさと今昔(2011-07-01) 123.抗ヒスタミン薬(2011-06-17) 122.予防医学(2011-06-09) 121.平和に至る道(2011-05-04) 120.祝福について(2011-03-10) 119.脳の限界(2011-02-22) 118.老学者と若い学者(2011-02-22) 117.生物と人間(2011-02-21) 116.遺伝病(2011-02-17) 115.日本気管食道科学会の今後に対する意見(2011-02-17) 114.太く短い生(2011-02-10) 113.事件(2011-02-10) 112.裁判官について(2011-01-20) 111.TPP加盟(2011-01-18) 110.スポーツドリンクの功罪(2011-01-07) 109.自己愛について(2011-01-04) 108.冬の日本列島改造論(2010-12-27) 107.前回の追加(2010-12-20) 106.女の一生(2010-12-14) 105.エキセントリック(2010-12-06) 104.心がわり(2010-12-06) 103.牛人間(2010-11-30) 102.公理(2010-11-30) 101.学会匆匆(そうそう)(2010-11-29) 100.群(2010-11-26) 99.ゲーム論(2010-11-25) 98.人、国、世界(2010-11-11) 97.君は本能を区別できるか?(2010-11-08) 96.進路指導(2010-11-05) 95.鳥の寿命(2010-11-05) 94.拝官僚殿(2010-10-29) 93.五十肩と障害者(2010-10-19) 92.開業11周年(2010-10-18) 91.家出(2010-10-16) 90.寿命(2010-9-13) 89.意識(2010-8-30) 88.近頃思うこと(2010-6-21) 87.声の個性(2010-6-17) 86.進化(2010-6-11) |
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予防にまさる治療無しというが、まさにその通りである。しかし、現代医学はどうやら病人を減らさないで、製薬企業、政治家(献金めあて)は薬で利益を得ることに腐心しているように思える。新しく開発される薬はどんどん薬価が高くなり、医療費を圧迫している。経済的な理由で使用をためらう人もいるくらいである。予防が重要であることは、紀元前から言われているのに、高血圧や高脂血症や糖尿病の予防を見ていると、全く実践的ではなく、生活習慣を守れない人が続出である。つまり、医者も企業も含めて、予防医学には利益が生まれないので、熱心には成れないのである。食事療法で治るような生活習慣病を、診察時間が無いためか、十分に指導されていない患者が、他の病気で私の医院を訪れる。話を聞いていると、どうやらコレステロールの薬の副作用に思えた。見るに見かねて、薬を止めて、肉食から菜食に切り替えるように指導した。それによって、薬よりもコレステロールが降下したので、患者におどろかれてしまった。もちろん内科医が算定する指導料なんてものはいただいていない。ガイドラインも企業の紐付きが臭うので、私はあまり参考にしていない。アレルギー疾患についても、アレルギー体質を作り出すような環境や食事や生活を直すことから始めないと、薬はただ症状を抑えているだけだから、やめれば元に戻る。ガイドラインに従えば、訴訟については有利になるかも知れないが、画一的な治療、機械的な医者を増やすだけである。高血圧の治療も130以下に変更になったが、これは企業が更に薬を使ってもらう患者のすそ野を広げただけに過ぎない。将来認知症を予防できると勧めているが、薬の副作用による身体的損失や医療費の高騰については無視されている。定期的な運動だけでも20-30も血圧が下がり、おまけに自分の体に健康がみなぎるのが実感できる。
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現代は大戦争が姿を消した変わりに,国家間の戦いはテロによる小規模な嫌がらせへと変貌している.2011年5月2日,アメリカの宿敵であるテロ集団,アルカイダの指導者であるビンラディン氏が,アメリカ軍に殺害された.この報道が知らされるとアメリカ国内ではお祭りのような騒ぎある.ニューヨークのタイムズ・スクエアやグラウンド・ゼロで,若者たちが誇らしげに,腕を高く振り上げているのが印象的だった. 中世の絶対王政が築かれると,次は国同士が勢力を拡大し始める.現代では,ようやく戦争の愚かさ(効率の悪さ?)に気がついた国の指導者たちは,もっと陰湿な方法で自国の勢力を広げようとしている.その反作用がテロである. 人間は放っておくと自己の権利の為に,他人の権利を奪う内戦状態に陥る.だが,他人と協定を結んで仲良くしたほうが,有利であると悟れば,内戦状態は収まるものである.そのためには,長年の試行錯誤が必要であり,法律が出来たから,ハイそうですかと言うことにはならない.そんな理由で国や民族の争いも長年にわたり続くと予想される.大金を国防予算に使い,福祉や教育などの予算が削られれば,国民の不満がたまる.それを躱(かわ)すために,帝国主義やいろんな場面で国の威信を世界に見せつけるのである. わが国の場合はどうだろう。一国だけ,すなわち日本だけが理想的な憲法を有しているが,隣の北朝鮮や中国は軍事費や政策で国民の不満が溜まり,それを補うために隣国を侵略しようとねらっている状況では,理想を貫くことは難しい.日本も最も無駄な軍事費に税金を使わざるを得ない.世界の平和は一国だけがリードしても,それ以外の国が,自国の利益だけを考えている場合,すなわちそこに住む国民が一時的な自国の利益が,自分たちのためになると考えているなら,訪れない.戦争やテロが起これば,大勢の死と経済的損失を伴う。合計して考えば,一時的な利益、第1次世界大戦後の日本の好景気は一時的であった、も吹っ飛んでしまうにもかかわらずである.戦争でいい目にあった国(指導者が勝手にそう思っているだけの場合が多いが)や、戦争やテロを知らない人たちや、忘れてしまった人たちが,争いを続けているように思う. 人間の歴史は短いけれど,原始時代の隣人の戦いから,古代の家名を巡る戦い,現在では国や民族や宗教の戦いへと徐々にまとまりを大きくしながら、いまだに続いている.いずれはお互いの疲弊によって解決するだろう。しかし,平和が少しでも早く訪れるように努力することは必要である. |
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*石川冬木博士、ブラックバーン博士ら。
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おまけ ナトリウム表記(mg)なら ナトリウムイオンNa+(mEq/L)という表記
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人間である限り,自己愛を持たない人はいないと思うが,それは自分が属する組織や社会の利益と天秤にかけなくてはいけない.自己愛が強すぎるとどうなるだろうか?新聞などでお目に掛かるのは汚職や横領である.組織が会社であれば潰れてしまうことがあるかもしれない.それに対して,国だから大丈夫だと,せっせと小銭を貯める公務員もいるかもしれない.そこまでしなくてもサボタージュやサービスの悪さは国全体としては,国に対する国民の信頼感の低下,国が決めたことが下部組織に徹底されない事による国益の損失につながる.病気で言えば,癌みたいなものである.癌細胞自身は自己の保存を目標とする.栄養補給のために血管を作り,抗ガン剤を分解する酵素を作り出し,増殖し続ける.けれども宿主もろとも滅んでしまう.人間自身が癌細胞だけで構成されているなら問題は無いが,いままでそんな人にあったことはない. 「賢者は足下を見て歩く、愚者は抜け道を探して歩く。」
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スピノザは言った.人間一人では何も出来ないし,生活すらも出来ないと.だから国家が必要である。人は多くの人と協力して大きな力を発揮する.しかし、せっかくまとまって国になっても、今の世界の状況は残念である。たとえば、手っ取り早く統一国家になろうと、国民よりも政府を優先させている専制的な国もあるし,いち早く統一された国もあるが、どちらも自国の権力や支配領域を増そうと,依然としてまわりといがみ合っている.人間が一対一で揉めるより,国同士は大きな力の戦いである.戦争になれば、双方に大きな損害がでる.せっかく作り上げた国が,大きな戦いを引き起こすのでは何の甲斐もない.これからは人種,言語,宗教,経済にとらわれた集団の覇権争いはやめて,大きな集団として機能しながら,目的は人間一人一人の幸福を求めるべきである.しかし、すべての枠を超えて一つにまとまるには,世界中の人間が協力し合わねばならない。今の状況を見ていると、世界の団結が必要になる天変地異,宇宙人の侵略でも起こらない限り,協力し合わないだろう.なぜなら,何事もなければ,人間は個人的な権力を広げることに夢中だからである.宗教も最後の審判など末法的な未来を予言し,信者たちの結束を高めようとしている.キリスト教,ユダヤ教,イスラム教、仏教など布教を目的とする宗教は同じ理論を使っているように思う.他者との争いは、人間が動物よりも思考能力が高度なため,本能で区切られている領域を超えて,奸計や謀略で相手の権利を奪おうとすることが原因である.それは,動物とは異なる「人間の本能」といえるものだから,抑制することは不可能である.人が大きな社会としてまとまるには外界からの脅迫が必要である。脅迫とは環境的なものになる可能性が高い。
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開業してからもう11年が過ぎようとしている.あと働ける時間は10年少々かなと思う.考えてみれば,開業医とは*隠者と似ている気がしないでもない.今でも大学に残っている同級生はすでに教授になっているし,病院に勤めている者は科長や副院長くらいにはなっている.会社で言えば,部長や重役クラスである.しかし、それからの出世は、なかなか大変である.運が良くないとそのままで終わってしまうこともあるし,上司との関係で悩み、開業する場合もあるだろう.開業医の仕事は毎日が同じ繰り返しで,気を張っていないと,目標が見えなくなりそうである.目的が業務の拡大なら,老健施設を建ててみたり,更に患者を集めたいなら,広告を増やしたり,日曜祭日にも診察を行えばよい.手術を売りにして集患を目論(もくろ)む診療所もあるが,年齢的にそれをこなせる期間は短いように思う.せいぜい10年くらいだと思うが、それ以降は体力というより精神的に堪(こた)える.年をとると集中力が続かず,知識が増えれば、医療以外の事に気をとられ、医療事故につながるからである.部下に若い医師がいれば話は別だが,手術から術後管理まですべてに気配りをするのはとても疲れる作業である.とかく目的を持って持続的に仕事を続けるのは,どの分野でも難しい.特にそれが毎日同じ仕事の繰り返しで,かつ,気を抜けない仕事ならなおさらである.
*俗世間から逃れて山奥などに隠れ住んでいる人。隠遁いんとん者。隠士
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ある事情から、長年住み慣れた家を出ることになった。その理由はここで話しても、読んでくれた人が私の立場にならないと分からないし、理解もされないだろうから、話すほどではない。今、済んでいるアパートの大きさは2LDKである。転勤で病院の官舎やアパートに住んだことがあるが、所詮、仮住まいと考えていたので、身の回りのものしか置いていなかった。おかげで、それ程、部屋が狭いと感じたことは無かった。しかし、今度はすべてのものを持ち、引っ越した。今まで済んでいた屋敷に比べると10分の1くらいの広さである。アパートには庭は無いから、それも含めるなら、30分の1である。その代わり、家や庭の手入れに悩まされることは無くなった。また近所の細々としたもめ事やうわさ話に一喜一憂することも無くなった。引っ越した最初の頃は、お風呂場や脱衣所が狭くて、手をよくぶつけていたが、2,3ヶ月もすると器用に上手くぶつけずにすますことが出来るようになった。当初は寝返りする度に手や膝に青あざを作っていたが、それも少なくなったようである。
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昨年の4月から介護保険審査会の委員をお上から承っている.今まで、耳鼻科には関係の無いことだと思っていた介護保険が,おかげで理解できるようになったのは,不思議な天の巡り合わせである.たとえば、介護老人保健施設は、病状は安定しているもののすぐに在宅へ戻れない等のため要介護認定を受けている高齢者へ、介護やリハビリテーション等を提供する施設であり、介護療養型医療施設は、急性期を終え長期にわたり療養を必要とした患者のための医療施設である、なんてことも、ようやく理解した。 最近になり,介護保険の給付を受ける人数が増えているように感じた.それは月に1回の介護審査会が,たまに月に2回になる.昭和20年代には人生50年だった寿命が、今では男79歳,女86歳である.寿命が延びた理由として、医学の関与は少ない(抗生剤くらい)。多くは栄養や衛生など,公衆衛生学上の進歩に依るものらしい.もしも出生率の低下と老齢人口の増加は、医学がもたらしたとすると,医学とは人間の種に対しては,何の貢献も、もたらさなかったようだ.人口の年齢分布を歪めて,全体的な老化をもたらしたとするなら,貢献どころか,悪化させたように思われる.
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