土で作る楽しみ 
     平成23年8月の作品     



   平成23年 8月17日

  

 
 今回の成形・焼成は、具体的目標をいつになくはっきりと持って取り組みました。目標をまとめると、おおよそ次の通りです。
1 平たく、薄く、歪んだぐい呑みを、とにかくたくさん成形して焼こう。
2 化粧土掛け、緋色釉、織部釉を構成し、渋さと奥行を出そう…でした。

1について…平たくて、胴がちょっとくびれている趣のある、かつセクシーな器を薄作りするとなると、ろくろ成形ではかなり気が張るものです。水分が多いとへたりますし、少なめだと作品に勢いがなくなります。結果、何とかたくさん成形でき、成形の腕も少しは上がったかな?とちょっとだけ喜んでいます。
2について…織部は冷却時に化粧土を巻き込んで縮み、めくれを起こしてしまうので、化粧土は生土掛けの薄掛けにしました。同様に緋色釉も生土掛けとして素焼き時に土に定着させておきました。結果は良好でした。さらに化粧土の二度掛けや土灰釉の薄塗りなども発色よく、狙っていた自然な渋さが出ました。

 今回は、施釉だけでまる1日掛かってしまいました。施釉だけで疲れてしまいましたが、やっただけのことはあったように思えます。さて、このぐい呑み+小鉢シリーズ、どれがお気に入りかな?

 ぐい呑みまたは小鉢として:赤土白土赤鉄砂土のミックス土 細かなはぜ石混ぜ 化粧土、緋色釉、織部釉、天然土灰、木灰透明釉:織部の発色が良好です。中央のやや茶色の部分は土灰の発色です。中央下の黒い線は「九隆庵」のマークです。裏側では緋色の発色も楽しめます。長径8.6 短径7.9 高3.3 

 ぐい呑みまたは小鉢として:釉薬類は上に同じ。上の写真の物もこの中に一つ含まれています。化粧土の垂れに勢いが出て良かったと思います。胴の部分のくびれを深くしたものでは、くびれに織部が溜まり、下地の化粧土の溜まりに重なって、緑というよりやや青みがかった色になっているものもあります。ぐい呑みにはやや大きめですが、広口なので、酒の香りを十分に吸い込みながら呑むという楽しみも持てますね。長径8.4〜8.9 短径7.5〜7.9 高3.2〜3.6 5個

 ぐい呑み:釉薬類は上に同じ。どれも程よく発色しています。織部の緑、化粧土の白、緋色の朱そして土灰の伊羅保風の発色という組み合わせは、かなり正解でした。奥行もあり満足です。しかも薄作りでかなり軽いので、酒をたくさん入れ、ぐびぐび呑んでしまいそうですね。想定外ですが、これから先、秋の風情にも合うデザインとなりました。長径7.0〜7.8 短径6.7〜7.3 高2.3〜3.4 9個

 小鉢:釉薬類は上に同じ。これは胴のくびれがなく、口が広がっている形のものです。どれも微妙に沓型に歪んでいますが、ほぼきちんと重ねて収納することができます。収納時の高さは8.5pです。側面の高さがあまりないので、釉の様子は見えにくいですが、それでも雰囲気はいいです。紅葉した紅葉などをそっと添えてもいいかもしれません。長径9.5〜10.0 短径9.0 高3.0 6個

 ぐい呑み:釉薬類は上に同じ。小さいサイズのぐい呑み(お猪口)です。小さいですがとてもかわいく、しかもとても軽いです。口の部分は薄く反りがあるので、呑みやすいと思います。見た目以上に酒は入るのではないかと思います。外側の透明釉は薄めなので、手触りがかなり良くなっています。その分内側はしっかり透明釉を掛けてあるので、酒はキラキラするのではないかと思います。径5.8 高2.7 8個

 ぐい呑み:薄い化粧土掛け 藁灰白萩釉の掛け分け。藁灰白萩釉は釉の切れ目に緋色が出るのが特徴なので、無釉の部分ができるように掛け分けました。九隆庵マークの部分は撥水剤で釉抜きしてありますが、その部分も同様に緋色が出ているものもあります。シンプルですが釉がしっかり溶けて掛かっているので、趣はあります。長径6.8 短径6.0 高2.8 5個

 片口小鉢:黄瀬戸釉 口の部分が内側に入り込んでいる形の小鉢です。内側に曲がっている部分には櫛目を入れて変化を出しました。もう少し色の濁りが出ると、土臭くなって昔風になるのですが、きれいに均一に焼き上がりました。細かな貫入が入っています。使い込むと風情が出るだろうと思います。これはこれで満足です。コンパスを使ってぴったり同じサイズのものを作ってみました。長径11.0 短径9.7 高3.8 4個

ぐい呑み:黄瀬戸釉掛け 胴のろくろ目や指で押して変形させた所に釉が溜まって変化が出ています。黄瀬戸も渋いですね。長径6.5 短径6.0 高2.6 2個 ぐい呑み:釉薬類は上の織部のものと同じ。ぷっくりとした形にしてみました。重くならないように底はしっかり削りこんであります。径6.5 高4.3 ぐい呑み:釉薬類は上の織部のものと同じ。こちらは口が広がっているものです。化粧土掛けのときに、横に振って、化粧土の流れを変えてみました。径7.2 高4.3
湯呑み:藁灰白萩釉の掛け分け 土がほぼ赤土だったため、乳濁がより一層際立っています。赤土と乳濁の組み合わせもまた渋いですね。大:径8.5 高4.8 小:径7.2 高4.5 小皿:化粧土、古代呉須、木灰透明釉かけ 青海波の文様の小皿は結構人気で、何かと不足しがち。化粧土は薄掛けだったので、土はかなり見えていますが、それもまた良しということで。径14.0 今回の焼成作品勢揃いです。実は子供たちの皿ものの作品も同時に焼いているので、結構な数となりました。

 

     何とか8月中に焼成を終えることができ、一安心です。
     今回はかなり釉掛けに工夫を凝らし努力しました。何とか想定していた焼き上がりとなったので嬉しい限りです。
     人工的作為的でなく、自然なたたずまいで奥行がある作品を目指しましたが、少しは雰囲気出たでしょうか?
     数もたくさんこなし、成形の練習はたくさんできました。
     ただ、釉掛けでうまくいったのはたまたまということで、すべて失敗なら大変なことになっていたかもしれません。
     基礎的な裏付けをしっかり積み重ねて、また頑張ってみたいと思います。