土で作る楽しみ 
     平成24年1月の作品     




   平成24年 1月28日 

 今回は黒の釉薬が中心です。黒の釉薬としてはこれまで漆黒釉を中心に使ってきましたが、今回は黒だけでなく黒に青みを帯びるようなものができないかということで、市販の黒マット釉薬にコバルトを混ぜて焼いてみました。黒マット釉にコバルトを釉の2.5%、5%、10%と分けて混ぜ焼成しましたが、結果は全て同じでした。黒マット釉などすでに安定的な黒の発色を求められている釉薬は、混ぜられても黒が勝って、コバルトの色の発色には全く影響されないようです。逆にコバルトの発色自体を試すために透明マット釉にコバルトを混ぜたものも焼きましたが、こちらは黒のベースに浮き出る青の発色が印象的でした。今後コバルトを使う場合は、黒系釉薬は使ってもごくわずかにして、透明釉ベースで調合するのが良いかもしれません。また、コバルトの混ざり具合があまり良くないようなので、撹拌機などでとにかくよく混ぜることが必要なようです。ポットミルはないので何とか工夫してみたいと思います。
 黒の他、最近連続して作っている化粧土、緋色、織部の構成作品に弥七田風の青のラインを入れてみました。紫の発色を期待していましたが、透明釉の薄掛けに反応してほぼ青のラインになりました。自然なライン引きのコツをつかむのはまだまだ難しい様子です。
 相変わらず写真写りが悪く、やや冷たい印象になってしまっていますが…今回はどれがお気に入りかな?

1 酒器セット:赤鉄砂土ベースの混合土はぜ石入り、黒マット釉、コバルト:しっとりとしたマットで、純黒ではなく微妙に茶が効いています。注ぎ器はとてもとても軽いです。ぐい呑みの見込みは、胎土のぶつぶつ感が少なめで、柔らかな印象になっています。注ぎ器径7.5 高10.0 ぐい呑み径7.8 高2.8


2 ぐい呑み:土や釉薬は1に同じ。小さい作品ですが、お気に入りです。九隆庵マークの、釉を抜いた辺りの胎土の雰囲気が渋くなっています。径7.0 高4.7 3 ぐい呑み:土や釉薬は1に同じ。腰が張った形。柔らかなマット釉がへら目に浸み込んでいます。これで呑めば、一気にぐいっといけそうです。径6.4〜7.0 高4.5 4 飯碗:土や釉薬は1に同じ。腰の部分に変化を持たせてみました。変化のおかげでかなり楽しめます。やや小振りです。径11.2 高5.8

5 飯碗:土や釉薬は1に同じ。腰の部分を削ったときに、削り跡を残しましたが、そこに釉が馴染んでいて面白くなっています。径13.7 高6.0
6 中鉢:土や釉薬は1に同じ。何でも盛ることができる鉢です。深さもあるので、汁物もOKですね。口辺に段をもたせたので、和の印象になっています。径17.0 高5,7 7 飯碗:赤鉄砂土ベースの混合土はぜ石入り、漆黒釉、コバルト外割2.5%:てかりのある黒です。漆黒釉は安定した釉で変化がない分、全体にきれいに釉が広がっています。径12.2 高6..8

8 飯碗:土や釉薬は7に同じ。飯碗としてポピュラーな形とサイズです。はぜ石のぶつぶつ感が少ないので扱いやすいです。径12.7 高6.3 9 飯碗:土や釉薬は7に同じ。口辺がやや広がった形のもの。黒の飯碗に白の銀シャリ。旨そうです。径13.2 高5.9 10 ぐい呑み:黒マット釉に青銅マット釉を部分的に吹き掛け。青銅マットを掛けた部分は釉に濁りが出て、良い味わいになっています。良い出来でお気に入りです。径5.9〜6.4 高3.5

11 小湯呑:土や釉は10に同じ。青銅マット吹き掛けの部分にはっきりと変化が見られます。形もすっきりです。径8.3 高5.4
12 ぐい呑み:赤鉄砂土に青銅マット釉掛け。見込みは発色が良くなっています。所々で釉のブクがあります。土に反応して融点が下がっているのでしょう。径6.6 高5.0 13 小湯呑:土や釉は12に同じ。色合いや釉の流れは良いのですが、ブクがひどいです。この釉だけ焼成温度を下げるのは難しいので、アルミナの成分を増やさないといけないかもしれません。径9.3高5.4



14 飯碗:透明マット釉にコバルトを外割5%混ぜ。酸化第二鉄下塗り。外側は緑色が強く、見込みは黒が強くなっています。とても不思議な印象です。青銅器のように見えます。径11.8 高5.5 15 ぐい呑み:土や釉は14に同じ。黒ベースに濁った緑が漂っています。この雰囲気はなかなかいけます。径6.2 高2.8 16 ぐい呑み:土や釉は14に同じ。シンプルな形。見込みに濁った緑が集まっています。径6.4 高3.2 

17 小湯呑:赤鉄砂土ベースの混合土はぜ石入り、透明マット釉にコバルトを外割5%混ぜたもの。見た通りの斑の模様になっています。径9.2 高4.8 18 ぐい呑み:土や釉は17に同じ。青よりも緑の印象が強い。中近東?の器のイメージかな?径6.1〜6.5 高2.6 19 豆皿:土や釉は17に同じ。実際は写真より緑っぽい色になっています。香を焚く皿にするといいかもしれません。径7.3

20 酒器セット:赤鉄砂土ベースの混合土はぜ石入り、化粧土、緋色釉、織部釉、木灰透明釉、青陶絵具:青は本当にワンポイントでないといけません。注ぎ器径8.7〜10.5 高7.8 ぐい呑み径6.0 高5.6 21 土や釉は20に同じ。青の入れ方が程よい状態です。もう少し紫で薄く出るかなと予想していたのですが、濃い目の青になっています。右径7.4 右高6.2 左径7.2 左高7.0  22 小湯呑:土や釉は20に同じ。緋色や織部の発色がとても良くなっていますが、青絵具がしつこい部分があります。径7.4 高4.5

23 小湯呑orぐい呑み:派手さがなく、落ち着いた雰囲気に仕上がっていて好印象です。径7.0〜7.8程度。 24 ぐい呑み:外側は釉を超薄掛けなので、マットな印象です。手触りが良いです。径5.8程度。 25 中皿:錆釉に赤土の共土混ぜ  4枚組です。錆釉にマット感を持たせたかったので、土を混ぜてアルカリ、珪酸分を増やしました。テカリは微妙に抑えられていますが、釉の厚みは薄いです。径21.5
25 四角皿:土や釉は20に同じ。季節の食材を少しだけ盛るといいかな?18.8×11.0 26 豆皿:陶絵具で描いたもの。超小さいですがとてもかわいいです。左径5.8 右径4.8

 

      黒マットはあまり好きではなかったのですが、今回焼いてみて改めて良さを見直しました。
     作品の雰囲気作りが上手になったのか、何とか味わいを出せるようになり、ちょっとうれしい感じです。
     ただ、本当は黒の中に沈み込んでいる青を表現したかったのですが、今回は無理でした。
     今後は、根本的に他の釉薬の調合についても調べ、コバルトだけに頼らない方法を考えてみたいと思います。

     黒マット釉と青銅マット釉の重ね掛けはなかなか良い味わいなので、今後も使えそうですね。
     化粧土、緋色釉、織部釉、木灰透明釉の酒器セットやぐい呑みはかなり上手に焼けましたが
     青の色をどのように入れるかは大きな課題です。小さな点であっても、全体への影響が大きい色です。

     年末から成形して、年をまたいでの焼成となりました。
     課題はさらに増しましたが、まあまあ楽しめる作品になったので良かったと思います。