土で作る楽しみ 
     平成24年5月の作品     




   平成24年 5月27日 

 今回は、黒の酒器セットと飯碗、そして前回の継続で歪みぐい呑みをいろいろ作ってみました。
黒の器は前々回の焼成でタルク黒マットの印象がよかったので、再び挑戦しました。今回はコバルトは混ぜず、景色の変化を持たせるために青銅マット釉の吹き掛けを部分的にしました。コバルトを混ぜなかったため、やや黒の奥深さが足りないようにも見えますが、ぽってりとした感じはなかなかよいです。青銅マットが重なった部分は光沢が出て、釉の滲みや濁りがあり、なかなかよい印象となりました。
 歪みぐい呑みは、今回も化粧土の二重掛け、緋色釉、織部釉、天然土灰、木灰透明釉の組み合わせです。全体的に緋色の発色が弱いですが、その分落ち着いた風情となりました。化粧土は鉄分が多いものと少ないものとの二重掛けですが、コントラストがはっきりとしてよかったと思います。ろくろ成形でのワイルドな成形法もかなり習得できました。相変わらず作り方は秘密ですけどね!
 呉須絵付けの皿では、青海波模様は渋く仕上がりました。幾何学模様も化粧土が薄かった分、透明釉の光沢感がよい感じです。
 今回は釉の薄さを感じるものが若干ありましたが、そこそこ目的は達成できました。今回はどれがお気に入り?
 

1 酒器セット:赤鉄砂土ベースの混合土はぜ石入り、黒マット釉、青銅マット釉:かなり渋い形で成形できました。注ぎ器の胴は扁平させ持ちやすくするとともに、酒がたくさん入るようにしました。また滲みがうまく出ていて良好でした。ぐい呑みも何か神器さえも連想させるような厳かな雰囲気が出ました。注ぎ器径10.0‐8.0 高9.6 ぐい呑み径4.8 高5.8

2 飯碗:青銅マットを掛けた部分にしっかり変化がありよい印象です。内側もぽってりと釉が掛かっています。径11.8 高5.2 3 飯碗:胴から腰にかけてのラインに変化を出しています。高台ぎりぎりまでしっかり釉が掛かっています。径12.2 高6.2 4 湯呑:高台を極力低くしてぽってり感を出しました。思ったよりもたくさんお茶が入るという訳です。径10.5 高6.0

5 飯碗:4の湯呑の口が広めの形です。小さめですがご飯はしっかり入るでしょう。径12.0 高5.5 6 飯碗3個:どれも形はよいのですが、口辺の釉薬が若干薄めです。口辺は薄いので水を吸収しやすく、釉厚が減るのが原因です。径12.0〜13.0  高6.0 7 湯呑:胴の釉薬がもう少し厚いとはぜ石が微妙に隠れて良い感じになるのですが…。径9.8 高6.6

8 飯碗:少し大きめの飯碗ですが、見込みは広いので鉢として使う方がよいかもしれません。径13.0 高6.0 9 ぐい呑みのいろいろ:織部の発色は化粧土の上ではあまり冴えず、胎土に掛かったものはよくなっています。どれもかわいいものです。  10 小鉢:やや大きめに成形しました。鉢として使うのがよいでしょう。かなり沓型に変形していて、櫛目やへら目とのバランスがうまく取れました。径:11.0‐8.7  高5.5

11 ぐい呑み:櫛目の表現がうまくできました。写真では見えませんが裏側の表現もかなりうまくできました。径9.7‐7.5 高4.0 12 ぐい呑み:見込みの底の化粧土が厚くなりひびが入っていますが、水漏れはありません。ひびも景色として楽しみます。径9.2‐7.2 高4.3 13 ぐい呑み:写真のように口辺の歪みが大きいですが、実用性には問題ないでしょう。中央の窪みに親指を当てると丁度呑みやすくなりますね。径8.4  高4.3

14 ぐい呑み:櫛目周りの織部の雰囲気はよいようです。ぐい呑みのサイズとしてはこの程度の大きさがよいかもしれません。径7.0 高4.2 15 ぐい呑み:これも左と同じく丁度良いサイズです。口辺のひねりあげた部分の織部の発色は良好です。径6.6 高4.2 16 ぐい呑み:緋色がもう少しよく出ると力強さが出たかもしれませんが、よい佇まいになりました。径7.4  高6.2

17 小皿:古代呉須 木灰透明釉:青海波がくっきり描けました。九隆庵マークを表面に配置しました。径10.2 18 豆皿:化粧土が薄かった分、胎土の色が出て素朴な感じになりました。径8.2 19 箸置き:窪みに織部を置いたもの。織部が周りの透明釉と混ざって滲んでいるのがまた面白い。長8.5

 

     黒の器はともすると単調になりがちですが、成形や重ね掛けで良い雰囲気が出せますね。
     今後も良い味が出せるように、少しずつ作っていきたいと思います。
     ぐい呑みの方もよい雰囲気になってきましたが、やはりポリシーは、「土がこうなってしまった」という
     自然な状態を表現することに努め、生き生きとした感じを出したいと思います。
     前回、課題として挙げられた「土の質感を強くし、土自体の表現力を高める」ということに関しては、
     土に五斗蒔の土を混ぜ、厚みがあっても手取りの良さを求めてみました。
     結果はなかなか良好だったので、また工夫したいと思います。

     忙しい中でも、少しずつ頑張っていきたいと思います。