土で作る楽しみ 
     平成24年9月の作品     




   平成24年 9月29日 


1 土瓶:信楽赤土と黄土mix 透明マット釉 酸化第二鉄 内側は木灰透明釉:とにかく渋い形にしたくて、注ぎ口や注ぎ口下部の袋状の成形にはかなり気を使いました。釉の渋さもかなりお気に入りです。径10.2  高8.8(蓋持ち手含む)
 今回の装飾は、酸化第二鉄を使った鉄錆系のイメージと、藁灰白萩釉の白濁り系のイメージのおおよそ2種です。形としては、土瓶と徳利に口ばしが付いた酒注ぎがメインで、それぞれに合う釉薬掛けをしました。
 鉄錆系は、透明マット釉に外割10%で酸化第二鉄を混ぜ、刷毛塗りしました。市販の透明マット釉の成分は全く分かりませんが、発色剤としての酸化第二鉄の添加では、釉調にはあまり変化が出ないだろうと予想されるので、比較的自信を持って取り組めました。刷毛塗りの結果、釉の濃い部分と薄い部分とで色合いの変化があり、かなり渋い出来となりました。酸化第二鉄だけ先に下地塗りをしておけば、均一な発色になったかもしれませんが、今回は釉薬に混ぜることで変化も楽しめる感じになりました。ただ10%混ぜにしては黒が弱いかなという印象でした。
  実はそういうことも予想して、さらにコバルトを微量混ぜたものも試してみましたが、これは奥に青が香るかなりはっきりとした黒になりました。黒を出したいのならコバルト添加は有効だと思えますが、印象はべたな感じになっていたので要注意です。ただしモダンな作風にすればきれいに見えるという効果もありますね。
 藁灰白萩釉の酒器セットは、形の面白さを求めました。また注ぎやすいように、注ぎ口の麓には溜まりの部分を付けてあります。収縮が大きくて、若干小さめに焼き上がりましたが、楽しい雰囲気となりました。
今回はどれがお気に入り? 

2 土瓶:土や釉薬は上に同じ:口ばしの部分がやや長めに見えますが、実際は程よい長さになっています。こげ茶〜茶〜茶系のグレーが散りばめられています。径10.0 高9.0(蓋持ち手含む) 3 土瓶:透明マット釉と酸化第二鉄外割10%のミックスにさらにコバルトを微量混ぜた釉薬:これだけは釉を半分だけ掛け、モダンな感じにしました。コバルトの効果が絶大で黒が前面に出ています。径10.0 高10.2(蓋持ち手含む) 4 ぐい呑み:前記1、2と同様の土と釉薬:自由な形で成形してみました。自由さの気持ちが釉掛けにも生きたのか、釉の雰囲気はかなり渋くなりました。小品ですが良い出来になりました。径7.0 高3.0

5 ぐい呑み:土や釉薬は上に同じ:歪み系のぐい呑みも鉄錆風ならどういう印象になるか試してみました。器の薄さが際立ち、古めかしい印象すらあります。左径約6.5 高3.8 右径約6.8 高3.8 6 中鉢:口辺がしっかり広がった形にしてみました。見込みは奥深く、かなりの容量が期待できます。刷毛塗りのテクスチャーがよく見えています。径13.3  高6.5 7 歪み片口中皿:左の中鉢に似ていますがこちらは歪みを入れています。茶系のマットな器に何を盛ると美味しく見えるかな?長径13.4 短径11.1 高5.7

8 飯碗:釉の濃淡の掛かり具合を見ているだけでもかなり楽しい。刷毛塗りの釉が厚くなった部分は、マット釉が勝っていてやや白濁り風になっているのが面白いです。径12.0 高5.2 9 酒器セット:薄作りの酒器セットです。注ぎ器の形に合わせて、ぐい呑みの肩の辺りにも変化をもたせています。手の中に置くのが心地よい肌触りです。注ぎ器長径10.6 短径8.7 高9.2 猪口径5.4 高4.2 10 カップ類:左側は、カップの形にも渋い色合いが合うかどうか試してみたもの。こういうカップで酒や焼酎を呑むのもよいかもしれません。左径6.9 高6.6 右径9.1 高4.0

11 中皿:皿の端に変化を持たせました。前記のカップの皿としても使えそうです。径13.4 12 四角皿:酸化第二鉄混ぜの透明マット釉を掛けた上に、酸化銅を筋状に刷毛塗りしたもの。酸化銅の部分が渋く光っていて重みがでて好印象です。長辺17.6 短辺10.6 13 鉢:コバルト混ぜの釉薬:素地を大きく見せて掛け分けしています。素地がよく見える分、明るくモダンに見えます。径13.6 高5.3

14 蓋付酒器セット:藁灰白萩釉:酒注ぎ器に酒を入れる際、口が広いと便利だろうということで蓋を付けました。しかし注ぐときには蓋を落とさないようにしないといけないという問題もありそうです。注ぎ器径6.8(口ばし含まず) 高13.8 猪口径6.6 高2.9(3個揃) 15 酒器セット:藁灰白萩釉:注ぎ器の注ぎ口などに渋さを求めました。やや小振りになったので、醤油注しや出汁入れとしても使えそうです。注ぎ器径6.5(口ばし含まず) 高12.2 猪口径5.4 高4.0(2個揃) 16 酒器セット:藁灰白萩釉:ややぼってりとした印象になりました。藁灰白萩釉の白濁りがはっきり出て、きれいな仕上がりになりました。注ぎ器径6.8(口ばし含まず) 高13.2 猪口径5.4 高4.0(2個揃)

17 小皿:成形時に底を固めるために指で押すことが普通ですが、その際、あえて親指の腹で模様を付け、化粧土でコントラストをはっきりさせました。径9.3 18 飾り皿:徳利を成形し底を切るときに失敗したので、切り開いて皿にしました。化粧土、織部などで装飾しました。長径14.6 短径11.6 19 ぐい呑み:藁灰白萩釉の掛け分けです。白濁りや釉の端の緋色など小品ですが楽しめます。径6.5 高3.3

 

     マット調で錆風の仕上がりを求めて焼成しましたが、結果はかなり良好な渋さが出ました。
     市販のマット釉と酸化第二鉄の相性は想定内でしたが、予想よりは黒が弱く茶系でした。
     さらにコバルトを混ぜたものは、今度は黒が強すぎでした。
     次回は酸化第二鉄を外割15〜20%で試してみたり、さらに酸化銅の重ね塗りなども試してみたいと思います。
     また、マットな印象を強くするために、酸化第二鉄を素地に塗ってから、ごく薄めの透明マット釉吹き掛け
     なども有効かなと思えました。

     土瓶や酒器セットの成形は時間が掛かりましたが、出来上がると楽しいものです。
     面倒でもスキルアップのために成形を続けたいと思います。
     忙しい中でも、少しずつ頑張っていきたいと思います。