7.8年前に栗拾いに1人で行った時の話。目指す山は戌山(いぬやま)という名の小さな山。町の西側にあるが山の下には国道も通っているのですぐに登れる山である。小さい頃はこの山の麓に栗の木が群生していたのでよく拾いに行った。昔のことを思い出してもう一度登ってみようというわけであった。山に入ると昔とは随分雰囲気が違っていて、何だかうっそうとした感じ。栗の木は全然ない。しばらく歩くと胡桃の木があった。「おお、そう言えば胡桃を拾って、周りの皮を足で踏んで取ったりしていたなあ。」と大きくなった木を見上げて思い出していると、その側に山のおじさんが座っているのに気づいた。山のおじさんというのは山で仕事をする格好をしていたからである。山のおじさんは「山登るんか?」と聞いてきたので、栗拾いをしに来たことを言うと、「あかんなあ。切れもん持ってえんやろ。」と自分の腰につけていた鎌のような物を見せた。「山に入る時は切れもん持ってえんとあかんぞ。何があるか分からんぞ。」とさらに念を押した。そうだなあ。そう言えばそうだなあ。素人考えで登るのはいかんなあと反省しながら、そして少し怖いながら話をした。その後「何や。この上登るんか?」と聞くので、少しは栗を拾いたかったので登ってみると答えると、「まあ、登ってもいいけど、何か変やぞ。おんちゃんも時々登るんやが、足がのう、滑るんやわ。そしてな、何かふわふわとしてな、いつ行っても気持ち悪うなって帰ってくるんや。」とこう言う訳。
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9月8日に撮影をしに行った。後ろの白くかすんでいるのが戌山。登る気はしない。 |